絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
 準備万端とでも言いたげな真っ白のバスローブと髪の毛から滴り落ちる滴に痛いほど心臓が鳴ったせいで、一旦足が止まり、視線が足元から上がらない。
 促されて、中に入り、靴を脱ぐ。
 セミスイートとスイートの差も分からない香月だったが、それでも窓から一望できる夜景は、さすが高級ホテルの上等な部屋からしか見えない、ここに泊まり得た者のみが堪能できる眺めだと、勝手に納得した。
 窓に吸い寄せられるように、足は部屋の奥へ進み、ベッドを通り過ぎる。
「……この夜景がそんなに気に入ったか?」
 窓際で、背後から突然肩に触れられ、更に、耳元で喋られたのでびくりとした。
「い、や……」
「今日は急でスイートがとれなくてな……」
 どんどんどんどん、体は背後から密着して、シャンプーのいい香りで包み込んで来る。
「え、あ……」
 以外の言葉が見つからない。
 手はすでに、服の中へ侵入してこようとしている。
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