絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
体の奥からくる疲労と眠気に耐え、何か少しでも会話をしようと思いながら枕を見つめていたはずなのに、気づけば2時間以上も眠っていた。
 ベッドから飛び起きた。
 寝ないつもりだったのに。
 私が、寝たから?
 部屋のデジタル時計は、午前5時38分。朝方は、彼の中ではもう過ぎたようだった。
 切なさに耐えきれなくて、電話をする。
 コールを10回以上鳴らしたが、出てはくれなかった。
 家へ帰った?
 ここへ、私を一人置いて?
 喉の奥が痛くなり、涙があふれた。 
 巽は、セックス以外の何かをしようとは、思っていないのかもしれない。
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