【完】校内1のイケメンに恋をした!!
「俺が7歳の時に親が離婚して、俺は親父と、優はお袋と暮らすことになったんだ。
まぁ学校は同じとこに通えてたから、俺と優はいつもお互いの家のことを話してた。朔也も交えてな。
で、親父もお袋もそれぞれ再婚して、それぞれの家庭で俺も優も幸せに暮らしてた。
だけど、俺が小5になってすぐ、色々あってさ…」
…と、そこで話が止まる。
苦笑する龍輝さんが何を思っているのかはわからなかったし、黙って俯く優ちゃんの気持ちはもっとわからなかった。
だから私たちは、龍輝さんが話し出すのを静かに待った。
「…小5ん時、親父が事故で死んだんだ。
遺されたのは血の繋がらない母親…仮にAとするか。
そのAと俺が遺されたわけ。
で、そこで問題なのは俺の処遇。
実の母に引き渡すべきか、このままAが育てるか、はたまた施設に入れるか…と、色々な。
実の母親は俺の面倒なんか知らねーよって態度だったから話にならなくて、
Aの両親は“育てる義務なんか無い”とか“何か間違いが起きたらどうすんだ”とか“子連れと結婚すること自体間違いだったんだ”とか、色々言って。
あぁ親父の親…俺のばあちゃんは俺を引き取りたかったみたいだけど、あんまり体が丈夫じゃなくて無理だったんだ。
じいちゃんは既に死んでたし、ばあちゃんも結局その二年後に死んじまった。
んで、親父の葬儀の日にさ、小5の俺を見ながらAの親は“詐欺師の息子!”って怒鳴った。
まぁ、可愛い一人娘が子連れのオッサンと結婚しちまったのが、“騙されて結婚させられた”って思ってたんだろうな。
A曰く“私が惚れた”らしいけど」
苦笑気味に笑う龍輝さんは、テーブルをジッと見つめたままそこに居る。
誰とも目を合わせず、ただ淡々と昔の話を続けていく。
「…そん時に、Aがキレてさ。
“この子は私の子供だから私が育てる”って言い切って。
…嬉しかったなぁ。俺、ここに居ていいんだって思って、すげー泣いた。
それから俺はAと二人暮らし。もちろん、間違いが起こることもなく幸せに暮らしてたよ。
Aの両親は今でも俺を見るとブツブツ言うけど、“そんなの気にしなくていいから”ってAが言ったから、だから今はあんまり気にしてない」
…話を進める龍輝さんは、苦笑気味じゃなくて本当に嬉しそうに笑ってる。
「Aさん」が龍輝さんを変えたし強くしていった。
Aさんが居たから今の龍輝さんが居るんだ。と、そう思った。