無題

中身を確認しようと千早がもう一度箱を振ろうとすると

「あぁぁぁ!だめだめだめ!!!」

百花が顔色を変えてプロのひったくりのごとくするりと箱を奪い取った。

「うわっ!なんだよ、突然!」

千早は目をまんまるく見開きいかにもびっくりしたような顔をした。

箱を奪い取った百花は、その箱に傷や破損がないか念入りに確かめる。

そして安心したように、ふぅと息を吐いて肩を撫で下ろした。

きっと千早をにらみ百花が言う

「ちょっと…気をつけてよ!これ凄く高価なものなのよ!」

「高価?ただの箱が?」

千早はすこし姉を軽蔑する様な目つきをしてみせた。

百花はその言葉を聞き少しムッとした顔をつくった。

そしてなにも知らない子供に説明する様な口調で喋り出した。

「これはね、おばあちゃんが大切にしてた物なのよ。子供の頃に譲り受けた高価な物らしいの。」

「…ただの箱じゃないか」

千早のそんな言葉を聞くと百花は、もう!と一言放ち、続ける。

「この箱の方じゃなくて中身!!ほらっ!!」
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