無題

口調は乱暴だが、優しくその箱の蓋を外した。

「え…。」

千早は息を呑んだ。

その箱の中には可愛らしい小人…のように見える小さな西洋人形が入っていた。

35センチ程の背丈で、黒い瞳に黒い長髪を腰までさらりと伸ばしている。

黄色の肌だがそこにはとてもきめ細かいベールがかかっているかの様な透明感がある。

大きな黒い瞳を守る黒いまつげは長く伸び、幼い子供を思わせる唇は桜色に染まっていた。

それはまるで、日本という未知の島国の女性を異国の人形師が模写したような風貌、日本人形のビスクドール版とでも言おうか。

日本人形独特の寸胴体型ではなく、すらりとした手足に小さい顔、細い首にくびれた腰を持つている。

今時のアイドルにも若手女優にも売れっ子タレントにもいない愛らしい顔立ち。

大きな黒い目には小さな島国の強さと弱さを秘めているようだった。

服装は袴姿をしており、薄桃色の着物に深紅の袴、袖部分にはほんの少し桜の模様があった。

そして胸元には人形の美しさにも負けない桜のブローチがついていた。

人形は真っ直ぐに千早を見つめているようだった。

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