last memory
そして黒い服をまとったその風貌は、まるでこの世のものではないようなきれいな男の人だった。
一方少年はというと、男と全く違った体躯の持ち主で、身長も低く、華奢で少女にも見えてしまう。
曇りの無い金色の髪に、透き通る青色の瞳は、目の前に来た男をじっと見つめていた。
少年は、彼のこの目に覚えがあり、漂う匂いもひどく懐かしい。
初対面なのにと思いつつも、いつの間にか男を凝視していた。
「あっ…」
それに気がつき男から目を逸らそうとしたときだった。
「探していた…」
男の低く通った声が教会に響いた。
だまっていた男が口を開いたのだ。
まるで、少年に自分から目をそらすなと言っているかのように。
男はふわりと笑うと、静かに言葉を紡いだ。
「ずっと探していたんだ」
その言葉には、愛しさと、嬉しさを含んでいたように思えた。
彼の笑った顔は天使のようで、まるで、時が止まったかのようだった。
その笑顔に見とれていた少年は、暫したって、ハッと我にかえり、「探していた」という言葉を心の中で復唱する。
おかしい。
どう考えてもおかしいのだ。
今まで会ったことのない、まるっきり初対面の人に探していたと言われているのだから。
さらに考えると、少年には身寄りがない。
そのような関係を作るのを自ら拒んでいたから。