契約恋愛

タイトル未編集

立川学園高等学校 ２年４組 如月結衣(きさらぎゆい)。
とりわけ美人ではないが、ブスだとは言われないくらいに造作は整っている。
クラスの中ではどちらかと言えば目立たない、普通の女子高生だ。

この立川学園にはさまざまな人種が通う。
親が資産家、政治家、医者、会社経営者、そんな肩書きを持っている生徒がたくさんいる。
その中で結衣の親は、ちょっと稼ぎのよい普通のサラリーマンである。

結衣は高校からこの学校に入学してから、派手な肩書きを持つ生徒と深くかかわり合うのはさけてきた。
けれど、今目の前には結衣がかかわり合わなかった人種の一人が立っている。

ここは放課後の学校の図書館。
大学に付属する大きな図書館の２階、奥まった本棚の通路に結衣は彼と向かいあっていた。
正確には、彼に通路をふさがれて困っていた。

「あの……どいてくれませんか？」
結衣は恐る恐る目の前の彼に声をかける。
しかし、彼は笑うだけで動こうとしない。
「なにか私に用ですか？」
「用というか……なんというか……」
結衣は目の前の彼、鹿野彰也(かのしょうや)の態度に困惑した。