the second 〜永遠の恋人〜
『…』

黙って頷いた男は紗耶香に対して半身の姿勢をとったままポケットから無造作に紙幣を取り出し紗耶香に突き付けた。

『お客さんこれ…』

どう見ても20万以上ある。1万や2万のチップは貰った事もあるが、これは多過ぎだ。かえって困惑してしまう。

『多いですよ…気持ちは嬉しいけど、それだったら、そのお金で又今度も指名して欲しいな。そのほうが又あなたに会えるから私嬉しいし』

男の手を取って紙幣を押し戻す。その手は驚く程きめ細かくスベスベしていた。

『いや…いいんだ。それより頼みがある』

右手で口を押さえ押し殺したような声で男は呟いた。かすれているので聞き取りにくい。

(やっぱりね…だからマネージャー電話でちゃんと言っといてって言ったのに…また変な注文つけるんじゃないでしょうねぇ)
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