the second 〜永遠の恋人〜
それほど尚人にとって紗耶香の存在は大きかった。

もう二度と彼女の体に触れる事が出来ないと思うと気が狂いそうになる。

『紗耶香…』

意味もなく呟いてみるが、思いのほか声が大きかったらしく、すれ違った数人の男が尚人を振り返った。

何処をどうやって歩いたのか分からないが、体が覚えているのだろう。ペンションまで1キロほどの所にまで尚人は帰ってきた。

送ると言う鬼頭の申し出を断って来たのだが駅から此処までの記憶が殆どない。

それほど呆然としていたのか…

紗耶香が死んでから、かなりの日数が経つというのに尚人は、彼女の存在の大きさを改めて感じた。

さっき鬼頭にも話した事で記憶が蘇ったのだろうか、確かあの猛吹雪の夜もこんな感じだった。

呆然としながら雪の中を歩いたのだ。

今から思えば自殺行為である。でも尚人は本当に死んでもいいと思ったのだ。
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