the second 〜永遠の恋人〜
紗耶香の死体を見てから数十時間しか経っていない状況では無理もないが、我ながらよく無事にペンションまで辿り着いたものである。

服装も和歌山から来たので重装備ではなかった。デニムにジャンパーの軽装である。

今となっても紗耶香を失った心の傷は全く癒えてないが、それでも死にたいとは思わなくなった。

彼女を殺した犯人は未だ捕まってないし、それに母親のミサ子が尚人を心から心配しているのも分かっていた。

『これ以上心配かけちゃ駄目だよな…』

自分に言い聞かせるように呟く。

少なくとも母親を少しは喜ばせたいという気持ちが尚人に残るささやかな生きる力だった。

『頑張って生きていかなくちゃ』

はっきりと言葉に出して尚人は信号を渡り始めた。
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