the second 〜永遠の恋人〜
舌を出しながら紗英は樹にしがみつく振りをした。

本当の所、紗英は昔から康太が好きだった。同時に康太の未音への想いにも気付いていた。

康太への未練を断ち切る為か、それとも康太に振り向いて欲しい裏返しの行動なのか紗英はいつしか樹の側に何時も居るようになった。

勿論、粗野な康太と違って繊細な樹は何処までも優しく、良い人だなとは紗英も思ったし、樹と付き合っても良いかなと思ったが、少し考えて止めにした。

幸運にも両親によって与えられた社会に出るまでの猶予期間はあと二年数ヶ月。これが永遠に続けば良いのだが、紗英は今の四人の微妙な関係が居心地良かった。

そんな紗英の気持ちを知ってか知らずか、樹も紗英に迫ったりはせず、今の所蓬莱学園大学スキー部(本当はサークル)のバランスは保たれている。
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