the second 〜永遠の恋人〜
その頃未音は無人の階段教室の奥にある資料室のドアの前で深呼吸していた。

息を乱していては走って来た事がばれてしまう。

数十秒待ってから平然とした顔でドアを開けた。

『どうしたんだ藍原未音君、この寒い中汗なんかかいて。走って俺に逢いに来たのか』

『ち、違うわよ!外に比べて此処が暑すぎるのよ』

頬を紅潮させて可愛く怒る未音を見て、弓暢はおかしそうに笑った。

『笑うな』

『ごめんごめん、あんまり君が可愛いからさ』

弓暢の言葉に未音は少し表情を崩した。やはり好きな男に可愛いと言われれば嬉しくない筈がない。

大量の書籍に占領された机に座っているのは考古学の講師、弓暢英吾(ゆみなが えいご)。

32才で間もなく助教授になるという噂があるエリートだ。

彫りの深い顔立ちに甘い表情、弓暢に憧れる学生は相当数いた。
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