the second 〜永遠の恋人〜
そのくせ男をあごで使い、バスの中でも泰明は飲み物を用意したりマッサージをしたりと大忙しだった。

どうして二人がバスで長野の雪山にやってきたかと言うと多恵の父親が二人の為に別荘を購入してくれたのだ。

それを大阪からはるばる見に来たわけだが、登記上の手続きミスで未だ他人の所有物になっている事がさっき判明したのだ。

おかげで今夜は小さなペンションに泊まる羽目になってしまった。

ゲレンデが近くにある事もあり大きなホテルは全て満室になっている。

そんな事もあって婚約者の陣内多恵は泰明にいつにもまして悪態をつきっぱなしだった。

しかし泰明が憂鬱なのはそんな事ではなかった。

多恵と結婚すると決めた時から幸せな家庭など考えても無かったし、父親の財産目当てだと言う事を否定するつもりもない。

いや…財産が目当てだ。

はっきりとそう言える。

今の泰明にはどうしても金が必要だった。
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