the second 〜永遠の恋人〜
『全く廊下が暗いじゃないの、貧乏臭いったら…』

弓暢の部屋を出てもう一度厨房に物色しに行こうと思った多恵はロビーの手前で口をつぐんだ。

目の前に誰か立っているのだ。

ただ廊下に電気が点いてないので輪郭ぐらいしか分からない。

『邪魔よ、どきなさい』

自分の道を邪魔する人間等この世に存在する筈が無い。

多恵は肩でぶつかるようにして前に進んだ。

そして止まった。

『…』

自分でも何が起こったのか分からない。

ただ腹部に奇妙な熱さを感じ立ち止まった。

いつの間にか行く手を遮っていた人物は居ない。

後ろに行ったのかと体をねじった多恵は猛烈な吐き気に襲われて体を折り曲げた。

そのまま足に力が入らなくなり床に崩れ落ちる。
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