僕らのシナリオ
次の日。
自転車で登校していく途中、8時半までに登校する高沢中学にしては、毎日僕は早く登校する。
途中にあるコンビニで軽く食べ物を買うのも楽しみのひとつ。
今日はなんとなく温かいものが食べたくて、肉まんを買ってみた。
コンビニを出てすぐに袋と肉まんの底についている紙をはがして捨てる。
口にくわえて自転車へまたがると、ペダルをこぎだして片手で肉まんをにぎりながら駆ける。
朝早いにも関わらず、真面目そうな学生たちがちらほらと歩いていた。
僕も真面目に見えるのかな。
166cmの中途半端な身長と、なんの特徴もない髪型。
むしろ少し天然パーマ。
顔もとくに、可もなく不可もなく……
前に中野に、
『お前は柴犬の子犬みたい。』
って言われたけど、どういうことなのかいまだにわからない。
こんな見た目だったら、もしかしたら端から見たら真面目な学生なのかも。
そんなことを考えて自転車をこいでいたら、いつの間にか学校に着く。
大きめの校門には生徒指導のあの数学の田中が立っていて。
その姿に心底うんざりしながらも、食べかけの肉まんを口に入れて少し強くペダルをこぐ。
「はよーございまーす。」
そう言ってそそくさと走って行こうとするが、やはり田中に捕まる。
「あー、ちょっと待て、三宅。」
「………なんですか?」
自転車を止めて振り向くと、田中がにやつきながら近づいてくる。
「お前、去年は数学の成績もよかったし、俺はお前に期待してるぞ?」
「はあ、ありがとうございます…。」
「最近は春だからかぼーっとしてるようだが、気合い入れろよ?」
「はーい。」
「ん、行っていいぞ。」
「はーい。」
なんだったんだ今の、とか思いながらまた自転車を走らせ、駐輪場へと向かった。
朝早い駐輪場はいつも空いていて、必ず僕は『2年C組』の札のつけられた駐輪場の一番隅に止める。
カギをかけ、鞄を肩にかけ直すと真っすぐに教室へと向かった。