僕らのシナリオ
結局、午前中ずっとクラスの雰囲気はそわそわしていて、昼休みになったころの僕はぐったりと疲れていた。
この状態で昼ご飯までいっしょに食べてしまったら大変なことになりそうなので、飯島を誘うのはやめて、中野とそそくさと教室を出てきた。
「ああ…………なんなんだよ。」
僕は思わずぼやいた。
教室の外に出て気づいたが、どうやら僕と飯島の噂は中等部にはかなり広まっているようで、少し廊かを歩くだけで内緒話の嵐。
「……………しばらくは学食には行かないほうがいいな…。」
「…………。」
中野のつぶやきに、僕はうなずくしかなかった。
パン屋のワゴンで買ったパンを持って、僕らは結局自分たちの教室に戻ることにした。
ほかのクラスの人たちにあれやこれや言われながら食べるよりかは、見知ったやつばっかりの教室のほうが、気が楽だと思ったから。
なんだか気まずい空気を気にしないように中野とベランダに出る。
ベランダはわざわざ覗きに来る人もいなくて、やっと落ち着くことができた。
「…………はあ。もう疲れた…」
そう言ってメロンパンにかじりつく僕に、中野は笑う。
「中学生のうちに付き合う付き合わないなんて噂が流れちまったら、こんなもんだよ。」
「………そう?」
「当たり前だろ〜?そんくらい覚悟しとけ。」
「だってこんな予想できないよ。」
「ガキだな。」
「お前に言われたくない!」
そんな会話をしていると、教室からベランダに抜けるドアが勢いよく開く。
僕と中野がそっちを見ると、知った顔がドアから現れた。
「ちさちゃん。」
僕が名前を呼ぶと、ちさちゃんは怖い顔で僕らに近づいて僕の隣にしゃがむと、口の横に手を当てて小さい声で言う。
「三宅くん、教室の外すごいことになってるよ。」
「外?」
思わずつられて小さい声で僕が聞き返している間に、中野が少し背伸びをして肩越しに教室の窓から中を覗く。
「あ〜あ、有名人は大変だな。」
すぐさまそうつぶやく中野に僕も窓からゆっくり顔を出すと、確かに教室の外はすごいことになっていた。
廊下から数人の女子が教室を覗き込んでいて、そのうちの何人かがクラスの男子に僕の居場所を聞いたり、男子がベランダのほうを指差したり。
見間違いだと信じたいが、泣いている女子もいる気がしないこともない。
「うそだろ………?」
半分震えるような声で言うと、隣のちさちゃんがしゃがんだ膝に頬杖をついて、人事のようにため息をつく。