僕らのシナリオ
「あんたは宮田と仲が良かったから、相手が宮田ならってこの子は諦めたのに……なんで飯島なの?」
「えぇ?ちょっと待ってよ。それは……」
「宮田は女子からも人気があるし、かわいくて頭も良いから…」
「待ってよ!!!」
興奮しだした女子に、僕は思わず大声を出した。
もう、耐えられなかった。
「さっきからさ、もう我慢できないよ。飯島の何を知っててそんなこと言うんだって。」
「はあ?あのね……」
「東さんの気持ちはありがたいけどさ、飯島のこと悪く言われる筋合いは、正直に言って、無いよ。それ以上言うのは僕が許さない。」
「…………。」
「もしも今後、飯島が傷つくようなことがあったら、僕が絶対に許さない。今度は、僕がこうやって君たちのこと呼び出すから。いい?」
「あんた、いい加減に………」
「あゆ。」
怖い顔で僕をにらんでいた女子が、振り向く。
「宮田さん……。」
そこには、噂の宮田さんが立っていて。
いつになく静かな表情と声の宮田さんに、あゆと呼ばれた女子が少しひるむ。
「宮田……これは……」
「あゆ、話なら私が聞くから。もうお昼休み、終わっちゃうよ?」
「でも………」
「ほら。」
「………………。」
「それに。」
そこで宮田さんが、4人の近くまで歩いてきて、号泣している東さんの顔を覗き込むようにして、自分のポケットから出したハンカチをわたす。
「こんなことしたって、だれも幸せになれないし。三宅くんもなっちゃんも私の友達なの。これ以上2人が傷つくことがあったら……
私だって、黙ってるつもり、ないからね。」
「宮田、でもさ………」
「あゆ。気持ちはすごくうれしい。ほんとに、ありがと。
また話聞くから、ね?」
「……………。」
宮田さんの言葉に大人しく帰っていく4人を見送ってから、僕は抑えきれそうにないもどかしい気持ちを吐き出すように、長いため息をついてしゃがみ込んだ。
宮田さんはそれに笑って、僕の頭をぽんぽんと軽く叩く。
「なんだか、新学期早々、大変だね〜。」
「はあ………ほんとだよ。
でもすっっごい助かった〜。ありがとう。」
「ん、どういたしまして。こっちこそ、私のクラスメイトがご迷惑をおかけしました。」
「はは、ごちそうさまです。」
「あはは。」
宮田さんは相変わらずニコニコ笑っていて、でも僕と飯島の事情とかを聞いたりはしなかった。
この状況と、さっきの言葉からして宮田さんも事情は知っているだろうけど、聞かないでいてくれることがむしろありがたかった。