僕らのシナリオ
教室に戻りながら、思わず宮田さんに愚痴をこぼす。
「もうさ、疲れたよ。
女子って難しいっていうかさ…。」
「あ〜、わかるわかる。
でも三宅くんは特に球技大会で人気が出ちゃったわけだし、女の子もみんな騒いじゃうよ。」
「そんなもんなのかな。」
「そんなもんだよ。ほら、ゆうちゃんなんかはあんなんだし、モテるのにぶきっちょだから、ああいうことよくあるんだよね〜。」
「えぇ?そうなの?」
「あるある。女の子の告白をバッサリ切っちゃうもんだから、泣く子ばっかり。」
「はは!わかるかも。」
「でしょ?その度に女の子の愚痴を聞いてあげるのが私だから、大変なのはこっちだよ〜。」
「あはははは。」
思えば久しぶりに会った宮田さんだけど、相変わらず話しやすくて少し気が軽くなる。
さっきの女子が、宮田さんは女子にも人気があるって言っていたけど、そうだろうな、と思う。
男子からもモテて頭も良いなんていうのは嫉みを集めるものだけど、それでも好かれる宮田さんは、やっぱりすごい。
教室の前に着いて、もう一度宮田さんにお礼を言う。
「ほんとありがと。今度なんかおごるよ。」
「お?やった〜。楽しみにしてる!」
「あはは、無茶は言わないでね。」
そこで宮田さんが僕の横に並んで、僕を肘で小突きながら小さい声で言う。
「あんなんばっかだろうし、なっちゃんのこと守ってあげなきゃだめだよ?」
「わ、わかってるよ。」
宮田さんはもう一度いたずらっぽく笑うと、教室のドアを開けて、
「ちさー!教室戻るよー!」
とちさちゃんを呼ぶ。
中野に手を振ってベランダから出てきたちさちゃんを待つと、
「じゃ、三宅くん、またね。」
と言って宮田さんは廊下を歩いて行った。
宮田さんに手を振って教室に入ると、中野が僕のパンを返しながら珍しく心配そうな顔になる。
「ボコられた?」
「ちがうから。」
そこで予鈴が鳴って、結局メロンパンしか食べれなかったことに今日何回目かのため息をついて、席に戻る。
すると隣の席に戻ってきた西田さんが、次のグループ学習の授業のために僕の机に自分の机を寄せてから、座って囁く。
「ね、さっきの、大丈夫だった?」
「……まあ、ね〜。」
「ふふ、だよね。」
すべて悟ったように苦笑いする西田さんに、僕も笑う。