僕らのシナリオ
「たぶん、今日は聞き飽きただろうけど………どんまい。」
拳を作ってそう言う西田さんに、僕はまた笑う。
「そうでもないよ。むしろ優しくされたの久しぶりで、泣きそう。」
「ほんと?じゃあ…どんまいどんまいどんまいどんまい。」
「あ、嘘。聞き飽きた。」
「あはははは。」
そういえば前に隣のクラスの男子が西田さんに告白したって噂も流れたけど、西田さんもこんなに大変だったんだろうか。
そんなふうに思っていると、西田さんが大きな瞳で僕を見つめて、笑う。
「男の子の告白は潔くて良いと思うけど、女の子は引きずるから面倒だよね。」
「え?」
まるで僕の考えがわかったみたいに言う西田さんに驚いていると、西田さんがおかしそうに笑う。
「だって、顔に描いてあるんだもん。」
「………へぇ〜、すごいね。」
「あはは、まあこれだけ長く女の子やってれば、いろいろあるしね……人間関係には敏感になるし、賢くなるもんだよ。」
「男に生まれてよかった〜。」
「あはは、私もうらやましい。」
そこで思わず、飯島を見る。
いつの間にか席に戻ってきていた飯島の背中は、僕よりも少し疲れているように見える。
やっぱり、男の僕よりも、女子の飯島のほうが苦労しているのだろうか。
もしかして、このお昼休みの間に、僕よりもひどい目にあってしまっていたり、さっきの女子みたいな怖い人たちに何か言われたのかもしれない。
女子の、付き合い。
その僕を見つめていた西田さんが、また小さく笑う。
「また顔に出てる。」
「え?うそ?」
「ふふ、ほんと。飯島さんも大変だったのかな〜って顔。」
「うわ〜、筒抜けじゃん。恥ずかしい……」
「あはは。でも、飯島さんなら大丈夫だよ。」
「え?」
「いろんな人に呼び出されそうになってたけど、このクラスの女の子たちで守ったの。」
「えぇー?」
ピースをして言う西田さんに思わず驚いていると、西田さんはまた笑ってから僕から目を離して続ける。
「私からね、みんなに言ったの。今日はみんなでお昼ご飯食べて、飯島さんをガードしようーってね。」
「へぇ〜、なんか、ありがと。」
「ふふ、どういたしまして。」
「でも、なんで?」
するとそこで次の授業の先生が入ってきて、号令がかかるので立ち上がる。
また席に座ると、西田さんは頬杖をつくようにしてうまく口元を隠して、小さく囁く。
「私もさ、三宅くんのこと、良いな〜って思ってたんだよね。」
「………えぇ?!」
「しーっ。」
思わず普通に叫びそうになった僕を西田さんが止める。
なんとか踏み止まって西田さんのほうを見ると、西田さんがいたずらっぽく笑ってまた囁く。