僕らのシナリオ






「だから、すっごく残念だけど、応援してあげようと思って。」

「応援?」

「そ。でもそれも今日までだからね。そこまで私は人間ができてないから。」

「………。」

「だから、明日からは三宅くんがちゃんと飯島さんのことを守ること。いいかな?」



シャーペンで僕を指して言う西田さんに、僕はしっかりうなずく。

西田さんはそれに満足げに微笑んで、先生がさっそく書きはじめた今日の課題をノートに書き写しはじめていて。


僕もそれをしばらく眺めてから、このクラスを見回す。


僕の知らないところで、みんな僕たちに優しくしてくれているのが、すごくうれしい。

飯島を守ってくれた女子と、僕を茶化しながらも結局は祝ってくれる男子と、いつもどおりいっしょにいてくれる中野と、西田さんに感謝する。




先生の説明がはじまって、慌てて僕も課題をノートに写していると、西田さんのノートが少しずれて僕に向けられる。


見てみると、西田さんのノートの左端に西田さんの字で、


『ケンカしちゃったときは教えてね♪』


と書かれていて。


静かな授業中に響いた盛大な音に、クラス中が馬鹿みたいに椅子ごと倒れる僕のことを笑った。














「飯島。」


授業も全部終わって、放課後。



日誌を書くために一人教室に残っている飯島に、僕は声をかけた。


「泪くん……まだ残ってたの?」

「ん…まあね。」


僕は飯島の隣の席にかばんを置いて椅子を出すと、飯島の横で向き合うようにして座る。

やっぱり少しまわりが気になるのか、少し瞳を動かしてから飯島は僕を見た。



「あのさ……なんか…疲れた、よね。ごめん。」

「そんな、謝らないで?」

「うん………でも、ごめん……」

「……………。」


それに少しうつむいてしまう飯島に、僕は心配になって思わず聞く。


「もしかして……嫌なこととか、された?」

「え?」

「その……呼び出されたりとか、悪口、言われたり、とか……」

「………ない、よ。」

「ほんと?」

「………………その…すごく見られたりするくらいで……特には……」

「そっか……。」



冷房も切られて少しずつ暑くなる教室で、僕はしばらく黙り込んでから顔を上げた。



「あのさ、飯島に、わかっててほしいことが、あるんだけど。」

「わかっててほしいこと?」


さらさらの髪を揺らして小首を傾げる飯島に、僕は立ち上がって飯島の正面に立って、言う。




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