僕らのシナリオ
そう言って2人が教室を出て行くのを見送って、僕を含めた他の部員はだらだらと片付けをはじめた。
最後の大道具を倉庫にしまい、預かっていた鍵で戸締まりをしたところで、
ガタ、ドサドサササ……
「うっわ!」
近くの別の団体の使っている倉庫からすごい音がして僕は開けっ放しのその倉庫のドアから中を覗き込む。
どうやら資料作りなどに使う画用紙やダンボールをしまっているらしい倉庫の中で、明らかにおかしいそれらの山があった。
雪崩にあったかのように積もった資材の山がわずかに動き、見知った顔が頭を出す。
「ぷわっ!」
「み、宮田さん?!」
僕は慌てて資材を踏まないように倉庫に入ると、積もったダンボールや画用紙をどけて、宮田さんを助け出す。
「み、三宅くん……うう…ありがとう…。」
「………ぷ、あは、はははは!何やってんの?」
「う、うるさいなあ!ちょっと手が滑ったの!」
思わず笑ってしまった僕を宮田さんは軽く小突いて立ち上がり、適当に資材を片付ける。
僕もそれを手伝いながら、思い出すと笑いそうになるのを必死でこらえた。
「で?何やってたの?」
「執行部の仕事。学園祭の飾りつけの準備にいる画用紙とダンボール取りに来たの。」
「それで生き埋めになったわけだ。」
「もー!忘れて!」
「あははは。」
なんとか片付くと、僕らは倉庫に鍵をかけてお互いの教室に向かい、その道中で映画研究部のあの事件を宮田さんに話した。
「うわぁ〜、大変じゃん。」
「そうなんだよね〜。どうすんだろ。」
「替えの台本とか用意してないの?」
「一応僕が脚本補佐で、用意はしてるんだけど今から新しい台本でやろうと思うと時間が足りないんだよね。」
「まだ3週間あるんだよ?」
「編集、って仕事があるからね。」
「なるほどね〜。」
考えこむようにうめきはじめる宮田さんに僕は笑って、半分持ってあげているダンボールを揺らして言う。
「僕らのことよりさ、宮田さんはどうなの?執行部とかテニス部とか、大変じゃない?」
「ん、そうでもないよ。
テニス部はわた飴作るんだけど、それは機械さえ借りれば済むから。」
「そっか、じゃあ平気だね。」
「うん。」
そこで執行部の教室の前に着き、僕は持っていたダンボールを宮田さんにわたす。
「ありがと。助かったあ〜。」
「はは、もう埋まらないでね。」
「なっ!もう忘れろー!」
「うわわわ。」
追いかけてくる宮田さんから逃げて、僕は手を振って映画研究部の教室に向かった。