僕らのシナリオ
恥ずかしくて赤くなりそうな顔をなんとか押さえて、顔を上げる。
「ど?春に夏の話買いたから変な感じも…………」
そこで僕は思わず言葉を止めた。
プリントが流れ出てくるコピー機をよそに、宮田さんはぽかーんと顔に書いてあるような顔でこっちを見ていた。
「……………あのさ、なんか言っ……」
「最高!!!!」
突然叫んだ宮田さんに、次は僕がぽかーんという顔になる。
「いいよ!いいと思う!」
「………え?ああ、ありが……」
「なんかね、映像が思い浮かぶの!
触ったら熱いくらいの砂浜と、太陽と、真っ青な海と空と、それから波の音!」
興奮したようにそう言う宮田さんについに照れ笑いをしてしまいながらも、うれしくて笑う。
「はは、ありがと。
映像が見えるって言われるのが、一番うれしい。」
「ううん。ほんとによかった。
わー完成が楽しみだなあ!」
そう言ってコピー機のほうに向き直る宮田さんにまた笑って、僕はまたノートをぱらぱらとめくった。
ほめられるというのは、やっぱりうれしい。
コピー機からプリントを受け取っていた宮田さんが、ふいに振り向く。
「そういえばさ、三宅くんは野球に出るんだよね。」
「うん。よく知ってんね。」
「アンケート回収したときに三宅くんの見つけたから。」
「あーなるほどね。」
シャーペンを指でくるくると回し、思いついた文章を書き込んでいく。
「野球好きなの?」
「ん。小学生のころはチームに入ってたからね。」
「そうなんだ!!じゃあ期待してるね。」
「やーめろー。」
「あははは。」
全部コピーできたらしく、プリントの束をトントンとそろえる背中を見つめて、次は僕が聞いた。
「宮田さんは何に出るの?」
「えっとねー、テニス。」
「テニス?得意なの?」
「いちお得意なほう?かなー。」
「期待しとく。」
「こらこらこら。」
プリントを抱いて戻ってきながら、宮田さんが僕の顔を覗き込む。
「私の試合がうまく三宅くんの試合にかぶってなかったら、応援に行くからね。」
「まじ?うれしいけど緊張するな〜。」
「ふふ、がんばってね。」
「うん。」
宮田さんはリュックをかついでプリントを持ち直すと、パソコンの電源を切る。