僕らのシナリオ
「もう下校時刻だよ。帰ろ。」
そう言う宮田さんを一度見上げ、そしてパソコン室にとりつけてある時計を見上げる。
確かに、あと10分で下校時刻のチャイムが鳴る時間だ。
「おーもうそんな時間かあ。
じゃ、帰ろっか。」
僕もノートとシャーペンをしまうと、鞄を持ち上げる。
「早いよなー。
あと少しで球技大会かよ。」
「うん。早いよねー。」
ゆったりと歩いて、パソコン室を出る。
そういえば、プリントが作り終わったということは、もう宮田さんがパソコン室に通うこともないのか、と思うと少し寂しくなる。
いっしょに帰るのも当たり前になっていたけど、明日からは別々だ。
そんな考えを掃おうと、話を切り出す。
「そういえば中野は結局どの球技にしたのかな〜。」
「あ、えっと確かね、結局バスケにしたんじゃなかったかな。」
「えぇ〜結局?なんなんだよあいつは。」
「あはは!なんか、高等部のバスケ部の先輩たちに勝負仕掛けられたんだって。」
「はあ?何それ!こわ〜。」
「ふふ、ただの冗談みたいだけど、ゆうちゃんも負けず嫌いだから、乗っちゃったんじゃないかな。」
「なるほどね〜。はは!楽しみだよ。」
「だね〜。」
そうこうしているうちに職員室に着いてしまって、カギと完成したプリントを先生にわたすと、いつもどおり職員室を出る。
「失礼しましたー。」
「したー。」
「…………したーって何?」
「え?何って言われてもな〜。」
「ちゃんと言いなさいよー。」
「今度からね。」
「もー。」
外は少しずつ日が長くなってきたようで、きれいな夕日が廊下を照らしていた。
5日後。
宮田さんが作ったプリントが、うちのクラスでも配られた。
球技大会は自分たちの好きな球技を選び、それに出場するというのが基本的な形。
チーム編成は基本的に学年ごとにまとめていて、今年は野球の希望が多かったようで、僕たちCクラスの野球希望者はDクラスを数人混ぜた編成になっていた。
見知った友達ばかりのチームは、ありがたい。
教室はざわついていて、一応学級会の真っ最中なのでみんな席についてはいるものの、まわりの友達と自分のチームの話で盛り上がっているようだった。
「三宅ー!!お前の試合見に行ける!」
教室の一番後ろの窓際にいる僕と、廊下に近い列にいる中野は近いわけではないのに、中野がそう叫ぶ。
さすがにみんなもそんな中野を笑ったりしていて、僕も少し恥ずかしく思いながら、
「はいはい。試合のときにそのでかい声出せよ。」
と言うとクラスの数人と中野がうれしそうに笑った。