僕らのシナリオ
ホッチキスで留められたプリントの束の一番後ろ。
そこには、いま中野が見ていたらしい各競技のタイムテーブルが書いてあって、確かにそこには中野の一回戦目と僕の試合がうまいことずれているように書いてあった。
「三宅くん、野球に出るんだね。」
どこかで聞いたような台詞に振り向くと、隣の席の西田さんがこっちを向いていた。
「うん。ほかの球技には自信なくて。」
「球技大会ってみんなすごいもんね。
緊張してきちゃった。」
そう言って笑う西田さんに微笑み、メンバー票のページへ戻って『西田』の名前を探す。
たしか、『西田麻央』だったかな。
すると………
「あ、西田さん見っけ。」
「あはは、探してくれたんだ。」
「バレーなんだ……って、あれ?
そういえばバレー部だったっけ?」
「せいかーい。よく知ってるね。」
うれしそうに笑って僕が開いているページを覗き込む。
さらに僕がまたタイムテーブルのページを開くと、西田さんがある場所を指差す。
「あ、あたしも三宅くんの試合見に行けるよ。」
「ほんとだ。」
「応援に行くね。」
「え〜、プレッシャーだなあ。」
「あはは!そんなこと言わないで!
ポジションはどこなのかな。」
「まだ決まってないんだ。
今度みんなで放課後練習するときに決める。」
「そっか。がんばってね。」
「うん。ありがと。」
西田さんはそこで、僕と反対側の席に座ってる友達に呼ばれたようで、そっちを向く。
ぼーっとプリントをながめていると、メンバー票の最後。
『見学』
と書かれた欄に、
『飯島夏美』
という名前があるのを見つけて、頭をかしげた。
放課後。
結局あのあとクラスの野球チームと話して、今日の放課後にさっそく練習をしてみることになった。
「三宅ー。じゃあ次投げてみて。」
「んー。」
うちのクラスには野球部が何人かいて、キャッチャーは野球部のやつに任せることになった。
まずはマウンドからそのキャッチャーに向かって投げてみて、それを見てポジションを決める。