僕らのシナリオ





「小さいころから病気がちではあったんだけど………

骨が弱いみたいなの。」

「……骨が?」


飯島さんはうなずいて、またゆっくりと話しはじめた。


「人よりも簡単に骨が折れちゃう病気なんだけど……

もともと生まれたときからそういう病気を持った子たちもいるみたいで、私はまだ症状が軽いほうなの。

ひどいとジャンプもできない子もいるみたいだけど、私はそこまでじゃなくて………」



僕はただ静かに飯島さんの話を聞いていた。

はじめは飯島さんの声は、すごく震えていた。

いまは少し落ち着いたようで、静かないつもの声に戻っていた。



「だから、ずっと運動はひかえてきたの。

とくに球技なんかをやって突き指とかしちゃったら、すぐ折れちゃうから。

でも、小学校のころからそうやって遊びを避けてきたら、あんまり友達が作れなくなっちゃった…。」


そこで飯島さんは振り向いて、柵に背中をあずけるようにする。


「この学校の球技大会だって、みんなが仲良くなるチャンスなのに……

私はその輪に入れない。

それはすごく悲しいし、あんまり病気のことをみんなに言って気を使わせるのも嫌だから、だれにも言えないし。」


そこでやっと飯島さんが僕の顔を見る。


「でも、三宅くんに話せて楽になった。

ずっと友達は少ないほうだったんだけど、三宅くんが仲良しって言ってくれて、嬉しかったよ。」



飯島さんは軽い足取りで教室に入り、自分の机に乗せていた鞄を手にとる。


その背中に、

「あのさ。」

僕は声をかけた。



飯島さんが振り向くのを見て、僕は微笑む。


「今日も迎えに来てもらうの?」

「え?うん。」


それを聞いて少し困った顔をすると、僕はまた言った。



「今日は、少し遅くなっても大丈夫かな?」

「えっと……たぶん。」

「じゃあさ…………」







「ちょっと、寄り道しない?」












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