僕らのシナリオ
グランドは異様な盛り上がりを見せていた。
球技大会は、一年間をとおしてもかなり盛り上がる行事のひとつで、とくに2日目の明日は各競技の決勝戦が行われることから、出店や吹奏楽部の応援まで入る。
今日の予選大会はその前日祭といった感じで、みながみな怖いくらいの闘志を燃やしていた。
「中野ー!!!」
「ゆうちゃーん!!!」
僕と宮田さんは運よく試合の開始時間がずれて、朝からはじまる中野の一試合目を応援にきていた。
さすがはバスケ部レギュラーの中野は、長身のわりにすばやいステップで相手を何人も抜いていく。
バスケのボールが中野の手とゴムでつながっているんじゃないかと思うほど、ボールは正確に床と中野の大きな手の平とを行き来している。
「中野せんぱーい!!!」
「きゃあああ!!」
「中野ー!!!」
明らかに他の試合に比べて黄色い歓声が多いのも中野ならではだ。
中野はそんな応援してくれる後輩や女子たちに愛想よく手を振りながらも、だれよりも早く僕らを見つける。
「三宅ー!!俺にもポカリおごれー!!」
汗を飛ばし、アウトになったボールを受け取りながらそう叫ぶ中野に僕も思いっきり叫ぶ。
「次でダンク決めたらなー!!!」
「おーまじか!!じゃあぜってー決める!!」
そう言って仲間にパスを出して走り出す中野に、僕は思わず顔をしかめる。
「あいつ………まじ?」
「ゆうちゃんはいつでもまじだよ!」
興奮したように隣で声を張る宮田さんに何か言おうと振り向いたところで、
「あ!!!ゆうちゃんやる気だよ!!」
と指をさして叫ぶ宮田さんに、すぐに僕もコートへ顔を向ける。
すると、正確なドリブルとフェイントを織り交ぜた怒涛の攻めで走る中野が、いつの間にかすでにゴールしたまで来ていた。
しかしやはりゴールの下はガードが固く、明らかに上手の中野を数人ががっちり固める。
「中野ー!!!!」
思わず僕がそう叫ぶと、敵のガードを長身を活かして背中で押して抜けた中野が、思いっきりジャンプする。
わずかに体制を崩して横向きに飛んだ中野は、左手でゴールをしっかりつかみ、右手に張り付けたボールを思いっきりゴールにたたき付けた。
わああああああ!!!!!
雷のように鳴り響く歓声の中、僕と宮田さんも我を忘れてはしゃぎまわる。