僕らのシナリオ




チームのメンバーとハイタッチを交わしながらこっちへ走ってくる中野は、応援席の最前列にいた僕らにも手を差し出す。

僕と宮田さんは思いっきりその手にハイタッチをした。


「ゆうちゃんすごい!!!
やったねー!!」

「まだ試合終わってねぇからわかんねぇけどな!」

「お前やるじゃん!」

「だろぉー?ぜってー決めるって言ったじゃん。」


ユニフォームの首元を引っ張って汗を拭いていたところで、また試合再会の笛がなる。

中野は走り出しながら振り向き、僕を指差して笑う。


「あとで、ポカリな!!」

「負けたらチャラだよ。」

「まっかせとけーい!」


拳を上げてそう言って走る中野の背中を見送り、僕は首にかけたカメラをかまえる。

少し興奮がおさまったらしい宮田さんが暑いのか、腕まくりをしながら僕を見る。


「それ、素材にするの?」

「そ。いま書いてる青春系のシナリオの良い刺激になりそうだから。」

「それいいかも!」



結局この試合は中野たちのチームの圧勝で、球技大会のはじまりを告げるにふさわしい盛り上がりを見せた。










「わー盛り上がったねー!」

「ほんとにね!」


僕はもう応援だけで暑くなってしまって、長袖のジャージの上は脱いで腰に巻いていた。

宮田さんもジャージの袖をまくって、長い髪はポニーテールにしている。


「宮田さんは最初の試合何時からだっけ?」

「えっとねー、11時30分からだからあと30分かな……って、やば!」

「30分?!これから着替えるんでしょ?」

「う、うん!じゃ、三宅くん、私行くね!」

「うん、がんばれ!」

「ありがと!またねー!」


あわてて走っていく宮田さんに手を振って、同じくあと少しで自分の試合がはじまることを思い出し、更衣室へ向かった。







僕と宮田さんの試合は完璧にかぶってしまって、1試合目は宮田さんは見に来ることはできない。

無失点という約束をしたが、まあ1試合目だしゆっくり行こうと思う。


白い体操着の背中にはばっちり1の文字。

長袖はもう脱いで、ジャージは下だけはいているが、それも膝までまくった。


帽子は野球部から借りた。



今は吉田とアップをするために、前の試合の横で軽くキャッチボールをしていた。

すると、


「泪くん!」


名前を呼ばれて、吉田から投げられたボールを受け取りながら帽子のつばを持ち上げた。





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