僕らのシナリオ
7回になってもお互いに無失点。
当たった相手が悪かったようで、相手は同じ2年生ながら野球部で守備のスタメンに入るようなやつばかり。
ヒットになりそうな当たりが出ても、アウトにされていた。
カシャッ。
妙な音がベンチに響きみんなの視線が僕にそそがれる。
僕は手に持ったカメラを下げ、
「あ、気にしないで〜。」
と手を振った。
いま僕らはワンアウトで1、2塁。
充分にチャンスがあった。
さらにここで、
「よしっ!!」
チームメイトがガッツポーズをとったので前を見ると、吉田が犠牲フライを打ち、ツーアウト2、3塁。
ここで次のバッターがうまいこと右へヒットを打ち、ランナーを帰せば勝利の確率はぐんと上がる。
そんなヒーローみたいなやつは……
「三宅、次お前だぞ。」
「…………………はーい。」
「さすがモテ期だな、三宅。」
帰ってきた吉田にそんなふうに肩をたたかれ、バッターボックスへ。
こんな条件のそろった舞台。
大チャンスなうえに、バッターは背番号1のピッチャー。
いままで無失点なうえにここでヒットを打てばヒーロー。
ああ、なんという。
「なんというモテ期……」
左利きの僕は右バッターボックスへ。
右に。右にヒットを打つ。
ただ僕はそれだけを願っていた。
マウンドの上のピッチャーがゆっくり足を上げる。
振りかぶった。
「よっ。」
なんとなくのタイミングで、右にボールが飛ぶようにバットを振り切った。
キィン!
甲高い音と、手に残る確実な手応え。
僕は必死でファーストへ走りながら、頼むからだれも取らないで、と祈った。
右端の視界にうつる驚いた顔の中野と宮田さん。
その2人の視線を追うと……
「まじ……?」
思いっきり伸びたボールは、みごとにライトのグローブへとおさまろうとしていて。
絶望しつつもなんとかファーストへ走る。
わあああああ!!!
妙な歓声にもう一度ボールの行方を追う。
すると。
「エラー?!」
思わず僕は叫んだ。