僕らのシナリオ




ライトの選手がなぜかボールに届かず、転がるボールを追う。


その間に3塁の仲間はホームベースを踏み、さらには2塁の選手までも滑り込みでホームイン。



そんなあまりにも。

あまりにもダサすぎるヒーローの誕生に、僕はため息をついた。








「三振!!試合終了!!」


結局2点を入れた僕らの攻撃のあと、9回表の守備では楽々スリーアウト。

サヨナラ勝ちとなった。



チームメイトに肩をたたかれながらなんとか騒ぎから抜け出し、フェンスの向こうへ。


すると中野がこっちへ駆けて来て、思いっきり肩に腕をまわしてくる。


「持ってるなー、ヒーロー!」

「うるさいな!エラーで悪かったよ!」


豪快に笑いながらそう言う中野に僕がそう騒いでいると、突然中野がくっついていないほうの頬に冷たい感覚が走る。


そっちを見ると、それは冷えたポカリで。

さらにその向こうにはうれしそうな宮田さんがいた。


「でも勝ちは勝ちじゃん!

三宅くんが無失点の試合したのも事実だよ。

はい、約束のポカリ。」


僕はポカリを受け取って、

「ありがと、宮田さん。」

とお礼を言った。



「お前宮田も褒めてやれよ!

こいつお前の試合見に行くから一瞬で自分の試合終わらせるーって言って一回戦目の相手にぼろ勝ちして来たんだぜ!」

中野がそう言うので、

「うそ、ほんと?」

と聞くと、宮田さんは胸を張ってピースをして笑う。


「いえい!見事2回戦進出です!」

「へー、すごいじゃん!
あと何回勝てば決勝?」

「えっとねー、あと5回勝ったらAブロック優勝で、明日の決勝に出れるんだ〜。」

「けっこうあるんだ。
でもがんばってね。」

「うん、ありがと!」


そうこうしていると、横を通りすぎていく同じC組の友達やらに声をかけられる。


「三宅やったじゃん!」
「ヒーロー誕生〜。」
「次も勝てよ!」

「あー、ありがと。」


さらには数人の女子が騒ぎながら通っていこうとするので、また中野が騒がれるかな〜と思いきや。


「あ、あの!
三宅先輩かっこよかったです!」

「へ?」


驚いてそっちを見ると、数人の1年生らいし女子がいて。


「三宅先輩、お疲れさまです!」
「応援してます!」
「次の試合も見に行きます!」


絵に描いたような展開に戸惑いながらも、片手で帽子を上げてぺこりと頭を下げる。

それだけで女子たちは騒ぎながら去って行った。




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