僕らのシナリオ
中野が相変わらず絶好調なのを確認すると、僕らはすぐに体育館の裏にあるテニスコートに向かった。
4つもあるテニスコートでは同時に試合が進行していて、そのひとつに宮田さんがいるのを僕らはすぐ見つけた。
ラケットがボールを打つ気持ち良い音が響く中で、近くで見るテニスというのは意外と迫力があった。
「ん!」
小さく声を上げて宮田さんが放ったサーブは、見事に相手のコートぎりぎりをとらえる。
「へー、テニスもおもしろそうだね。」
そうつぶやくと、飯島さんもゆっくりうなずく。
「さよちゃんテニス上手だよね。」
「はは、意外な一面だけど。」
僕がそう言って笑うと、テニスコートのフェンスに手をかけた飯島さんが意外そうに振り向く。
「さよちゃんは体育得意なんだよ。
去年の体育祭で選手リレー出てた。」
「えぇ?なんか良くこけてそうなイメージあったから、意外。」
「あはは、ちょっとわかるかも。」
そう言って盛り上がってると、いつの間にか休憩に入った宮田さんが真っすぐにこっちに歩いて来る。
「三宅くんもなっちゃんも、丸聞こえです。」
怒ったように言う宮田さんに笑っていると、
「さよー!!」
ちょっと離れた場所にいた友達らしい女子数人に声をかけられ、手を振って走っていく。
さらに後輩らしい女子からも、
「先輩がんばれー!」
とか言われていて。
さらにすごいことに、僕の隣に固まっていた男子の集団なんかは、
「宮田さん相変わらずかわいいよな〜」
なんて声まで聞こえたりして。
「…………なんだなんだ?
宮田さんもモテモテじゃん。」
ため息混じりにそう言うと、飯島さんが困ったように微笑んで、
「さよちゃんかわいいから。
でも三宅くんもさっきの試合で人気者になったんじゃない?」
と言うので、僕は腰を伸ばしながら言う。
「んー。そりゃあ今までにないほど女子に絡まれたけどさ。
なんていうか、あんまり……」
「うれしくない?」
「うん。」
そりゃあ、今までモテるやつがうらやましくなかったって言うと嘘になるし、それなりにあこがれたりもしたけど。
実際、まあほんとにそうかはわかんないけど、人気者になってみても、大してうれしくなかった。
「……まあ、今の僕はあまりにそういうことに興味が無さすぎるのかも。」
「……泪くんらしいね。」
「どういう意味で?」
「もちろん良い意味で。」
笑ってそう言う飯島さんに、顔をしかめる。
だけどその飯島さんがあまりに楽しそうに笑うから、僕は何も言えなくなった。
「セット!」
結局宮田さんはこの試合も圧勝で、本当にテニスが得意なんだということがわかった。