僕らのシナリオ
「ぷはっ!」
ポカリを口から離した宮田さんが、僕を指差して言う。
「じゃ、決まりね!
月曜日の振り替え休日に、ゆうちゃん私決勝進出おめでとう!三宅くん3試合目1失点の1点差で敗退どんまい!の会を開きます。
場所は遊園地!」
「はははは!それ最高!」
「いろんな意味でうるさいタイトルだね。」
中野も宮田さんも一日の疲れなんか感じさせない様子で遊園地の話で盛り上がっていた。
こんなに笑ったのは久しぶりで、いつまでもこうしていたい、なんてどこかに出てきそうな言葉でしか、言い表せない気持ちになった。
「飯島さん!ほら、早く!」
「う、うん!」
僕はテニスコートに集まる異常な人数の学生を掻き分けて、フェンス近くまで来ていた。
遅れてきた飯島さんの手を引いて近くに来させると、球技大会2日目だからこそ出る屋台で買ってきたタピオカの入ったジュースをわたした。
「ん、りんご好き?」
「あ、うん。」
「よかった。僕もりんご好き。」
「ありがとう。」
目の前では宮田さんの試合が1回目の休憩をしていた。
宮田さんはくじ引きで決まった一回戦の相手には買って、今が2人目。
高等部の2年生、しかもテニス部とあって、なかなか苦戦していた。
「さよちゃん、大丈夫かな。」
りんごジュースのストローをくわえながら不安そうにそう言う飯島さんを僕は見た。
決勝戦に出る選手は少ないため、今日は昨日のジャージとは打って変わり、制服を着た生徒が多い。
飯島さんも今日は制服に眼鏡、髪は下ろしたいつもの姿になっていた。
「ま、宮田さんは緊張しない質だから、自分のペースでやるとは思うよ。」
笑ってそう言うと、飯島さんも少し微笑んで、しかしなぜか悲しそうな顔をして僕から目をそらしてしまう。
どうしたの?と聞こうとするが、その前に試合開始のホイッスルに遮られてしまった。