僕らのシナリオ
「僕さ、映画のシナリオとか書くのが好きで……
それでこうやって良い景色とか、アイディアが出そうな景色を写真に残して、あとでイメージを思い浮かべるのに使うんだよ。」
「シナリオ?
いっつも持ってるノートに書いてるの?」
「そう。よく知ってるね。」
「ああ、えっと、ずっとなんのノートなんだろうって気にしてたから。」
そこで飯島さんが、
「あ。」
と、ある写真のところで声を上げる。
僕もボタンを押すのをやめると、飯島さんはそのディスプレイを指差して微笑む。
「私、この写真好きだな。」
僕もその写真を見ると、そこには夕日に照らされた河原を、小さな女の子を背中におんぶした男子が歩いている姿が写っていて。
逆光でその男子の顔はわからないが、川がきらきらと光っていて、アングルもとても良い。
だけど。
「あれ、僕こんな写真撮ったっけ?」
僕にはその写真の見覚えがなくて。
「泪くんが撮ったんじゃないの?」
飯島さんが不思議そうに聞くので、僕はうなずいてからその写真が撮られた日付を確認しようとして………
ばふっ。
顔に何かが当たり、視界がピンク色に染まる。
驚きで固まり、しばらくしてそれを手ではらうと、
「あはははははは!」
「はははははは!」
僕にわたあめの入ったピンクのかわいらしい袋を当てて爆笑する宮田さんと中野の姿があった。
中野はユニフォームのままで、2人してお腹をかかえて笑い続ける。
飯島さんまで少し笑ってしまっていて。
「……………なに?なんなの?」
僕がそう聞くと、やっと笑いのおさまってきた中野がまだ笑い上戸のように言う。
「はは、は、あー、うける。
いや、そこで宮田に会ったから三宅にもわたアメおごってやろうって話になってさ。」
「あははは!
そ!そうなの!
どうせならピンク色のやつにしようって、ゆうちゃんが………」
「……ふーん。ありがと。」
僕はおとなしくその袋を受け取る。
袋にはいまの日曜日の朝にでもやっているらしいヒロイン系のアニメがプリントされていて、恥ずかしいこと極まりない。