僕らのシナリオ
僕は、この中野の人気は、ただあいつかイケメンだからだけではないと思う。
「渡辺、パス!!」
あいつはいつもふざけてはいるけど、結局は馬鹿正直な真面目なやつなんだ。
バスケがうまいのだって、それは誰よりも努力しているからで。
女子からのアピールに反応しないのだって、本気に好きなやつ以外に適当な愛想を振り撒きたくないからだ。
わあああああ!!!
そこで中野が、スリーポイントシュートを決め、同時に試合終了。
1点差の勝利。
チームメイトと抱き合って喜ぶ中野。
隣で宮田さんは飛び上がって喜び、飯島さんの手をとっていっしょにはしゃぐ。
観客に手を振って、興奮と走りすぎで真っ赤な顔を、中野は思いっきりほころばせていた。
「……あいつにまたポカリでもおごるかな。」
僕はなんとなく、一人でそうつぶやいた。
全校生徒が集まっての表彰式。
決勝に進出した選手が名前を呼ばれ、ベスト3に入った選手は前に出て賞状をもらう。
優勝した中野たちのチームは、もちろん前へ呼ばれた。
宮田さんは得点差の協議で負け、4位に終わったが、それでもうれしそうだった。
僕はそんな2人の名前が呼ばれたとき、自分のことのように誇らしくなった。
表彰式も終わり、僕はなんとなく教室に戻った。
こういう、興奮が冷めきらないままの静けさというのは好きだ。
昼間の盛り上がりが嘘だったみたいに、静かな教室。
ベランダのいつもの場所に立って、柵に脇を乗せる状態で外をぼんやりとながめる。
「……………〜♪」
なんとなく、鼻歌を歌う。
だれの曲だったかな。
あんまり音楽に詳しくはないけど、この歌の歌詞が好きで。
「………『きっと君は知らない
この世界の大きさも
あの太陽の熱さも
宇宙の広さも
そして
君を想う僕の今を』……」