僕らのシナリオ
「はははは!!
世界が、世界が止まらねぇ!
あー、さすがに回しすぎたな!」
コーヒーカップの柵にしがみついて笑いつづける中野を心の中で呪って、なんとかまともになってきた景色に一度頭を振って飯島さんに礼を言う。
「あー、気持ちわる。
でも、もう大丈夫そうだ。
飯島さんありがと。」
「あ、いいの。もう平気?」
「う、うん。おえー、中野とコーヒーカップなんかもう二度と乗らない。」
「あはは。」
すると宮田さんが僕の背中を軽く叩く。
「だーから言ったでしょ?
三宅くんも今回で学んだことだし、結果オーライ!」
「ほんと宮田さんすごいな。
一生着いて行きます。」
「うむ。精進したまえ!」
力こぶを作る仕種をする宮田さんに笑って、中野を見ると中野もなんとか復活したようだった。
「あー、おもしろかった。
てかさ、お前まだ宮田のことも飯島のことも呼び捨てじゃないのな。」
「へ?」
突然の指摘に思わず目を丸くする。
「あ、確かに。
まあそれが三宅くんらしいって言えば三宅くんらしいんだけど。」
宮田さんまでそう言うので、なんとなく考えてしまう。
まあ、いつになっても、友達の呼び名というのは買えるタイミングが難しいものだ。
「でもさ、ゆうちゃんだってちっちゃいころは私のこと、沙世って呼んでたでしょ?」
「そうだっけ?
でも中学生にもなって名前を呼び捨てにすんのはなんとなく抵抗が……」
そんな会話を聞きながら考えるが、宮田さんは宮田さんだし、飯島さんは飯島さんだ。
「………ま、自然に出てきた呼び方で呼ぶよ。」
そう言って僕はまわりのアトラクションを見上げた。
「なー、次は大人しめのやつ乗ろうよー。」
昼ごろには僕はなんとか慣れて、絶叫系にも楽しんで乗れるようになってきた。
ただ、今は………
『腹減ったー………。』
僕と中野はそうつぶやいた。
「はあ。コーヒーカップの余韻はもうないけど……」
「今は腹が減りすぎて気持ちわりぃ……」