僕らのシナリオ
さよちゃんが泪くんの横に追いついて、2人で笑いながら観覧車のほうへ歩いて行くのを私は見送った。
「飯島。」
振り向くと、中野くんがベンチにゆっくり座って、だるそうに長いため息を吐いていた。
「あの、大丈夫?」
中野くんの横に行って隣に座りながら、私は聞いた。
中野くんはそれに片手だけで答えると、横目で私のほうを見て言う。
「お前さ、ほんとに行かなくていいの?」
中野くんが言っていることがよくわからなくて首を傾げると、中野くんはまたため息をついてうつむく。
「だーかーらー。
お前三宅のこと好きなんだろ?」
「……………えっ。」
なんの抵抗もなく、薮から棒に言われた言葉に、思わず動きが止まる。
「いやさ、俺が口出しすることじゃねぇのはわかってんだけど、お前があまりにもわかりやすいから。」
「わ、わかりやすい?うそ?」
「そうやって言うってことはやっぱ好きなんだろ?」
「あ…………」
「ほら、わかりやすい。」
いたずらが成功したみたいに楽しそうに笑う中野くんの言葉に、思わず顔を両手でおおう。
「だから、観覧車行かなくてよかったかって聞いてんの。」
「それは…………」
正直、ついて行きたかったし、いっしょに観覧車に乗るなんて夢みたいだなと思う。
だけど………
「宮田がいるから?」
思わず中野くんを見てしまう。
中野くんはその私の顔を見て、また声を上げて笑う。
「だーから、わかりやすすぎ。」
私は顔が熱くなるのを感じながら、少し悲しくなってうつむいた。
「…………だって……さよちゃんと泪くんは仲良しだから……」
「だから?」
「さよちゃんも……泪くんのこと、好きなのかなって…。」
「ふーん。」
「それに……泪くんだってもしかしたらさよちゃんのこと……」
「お前さ。」
突然言葉をさえぎられて、思わず顔を上げる。
中野くんは自分の膝に頬杖をついてこっちを見ていて。
「お前さ、心配しすぎ。
ナントカなのかも、とか。
もしかしたら……とか。
考えたって確かじゃないことに悩んだって仕方ないじゃん。」
当たり前のようにいいはなつ中野くんに、思わず目を見開く。