僕らのシナリオ
観覧車は思っていたよりも混んでいなくて、すんなりと乗ることができた。
「へ〜、なんか意外と楽しいね。」
「意外ととは心外な!」
椅子に逆向きに座って遠くを見つめて感心する僕に、隣で同じ姿勢をしている宮田さんはそう言って僕を肘で小突いた。
僕はその宮田さんに笑ってから、どんどん低くなっていく景色を見下ろす。
「だってさ、観覧車って遠くから見たらすごい遅いし、どっちかっていうとジェットコースターばっか乗るから。」
「あらら〜それは損してるよ。」
「あはは、大袈裟だよ。
でも確かに乗ってよかったと思う。
きれいだね。」
「ね。
ちっちゃいころから遊園地に来たら絶対観覧車に乗るの。」
本当にうれしそうに笑っている宮田さんを見て、僕も同じようにうれしくなる。
片方に2人が座っているせいで、ゴンドラがわずかに傾いているけど、気にならなかった。
「観覧車、ほんとに好きなんだね。」
僕がそう言うと、宮田さんはポニーテールを揺らして振り向き、思いっきりうなずく。
「うん!私が写真撮るのを好きになったのも、観覧車から見る景色が好きだからなの。
ゆうちゃんともよく乗ったんだ〜。」
僕はそれを聞いて、少し寂しい気持ちになる。
なぜだかわからないけど、なんとなく。
中野と宮田さんの間には、僕の知らない数年間がある。
僕は今さらそこに入っていくことはできなくて、楽しい思い出を共有することもできない。
それはなんだか、仲間外れになったような感覚で、少し寂しい。
「……そっか。
でも中野みたいなやつだと観覧車にじっと乗ってられないんじゃない?」
僕がそう聞くと、宮田さんは驚いたように感心したように目を見開いて何度もうなずく。
「そう!そうなの!
ゆうちゃんはいっしょに乗っても暴れ回るばっかりで景色なんかちっとも見ないんだよ!」
僕がそれに声を上げて笑っていると、宮田さんは優しい微笑みを浮かべて僕を見る。
それはいつもの元気な宮田さんとは雰囲気がちがって。
「三宅くんはさ、良い人だよね。」
突然の言葉に思考がついていかなくて、思わず黙り込む。