僕らのシナリオ
「その日はやっぱり夕日がきれいで、私いっぱい写真撮ったの。ほら。」
宮田さんがデジカメのディスプレイをこちらに向けるので、覗き込むとやっぱりそこにはとても綺麗に写された夕日と川の写真が浮かんでいて。
「……きれいだね。」
「でしょ?ほんとにきれいな夕日だったんだよ〜。」
宮田さんはまたデジカメを手元に戻して、にこにこと笑う。
「そしたらね、しばらく歩きまわってたら、高沢中の制服着た男の子が河原に立ってたの。
その子もカメラを持ってて、一生懸命レンズを覗き込んでて。」
カメラを構えるポーズをとりながら言う宮田さんに僕は笑う。
宮田さんも笑って、また続けた。
「写真好き同士でなんだか親近感がわいちゃって、しばらくその子のこと観察してたんだけど……
結局話しかけられずに終わっちゃったの。
でもそれからずっとその子にまた会ってみたくて、だれなんだろうな〜って思ってた。
そしたらさ、ある日中庭で一生懸命写真撮ってる男の子を3階の廊下から見つけたの!」
両手でガッツポーズを作りながらそう言う宮田さんに、僕は微笑んで聴き入る。
「思わず廊下の窓に張り付いて見てたらさ、その男の子にゆうちゃんが近寄ってくもんだからびっくりしちゃった!」
「ってそれもしかして僕なの?」
「当たり前でしょ?
三宅くんの話してるんだから〜。」
「いや、まあね〜。」
突然登場した自分の存在に驚きながらも、なんとか記憶をたどる。
でも学校中庭で写真を撮るのはよくあることで、中野といっしょにいるのもいつものことだ。
「ん〜。」
「いつのことかわかんない?」
「うん………いつかな〜。」
「でも三宅くんが写真撮ってるのはそのあともいっぱい見たから、わかんなくて当たり前だよ。」
「そんなに見てたの?
なんか今さら恥ずかしいな〜。」
「あはは。
でもまあ、そういうわけで、私は前から三宅くんのこと知ってたの。」
にこにこと微笑んで言う宮田さんに、何度もうなずいて納得する。
「へ〜。話しかけてくれればよかったのに。」
やっぱり今これだけ仲がいい宮田さんとなら、そのときから仲良くなってもよかったんじゃないかと思う。
すると宮田さんは少し困ったように笑って。