僕らのシナリオ
僕はその3人に見覚えがあった。
Aクラスの女子で、宮田さんといつもいっしょにいるメンバーだ。
名前は知らないけど。
その3人のうち先頭に立っているショートカットの女子が、驚いたように僕を見て、それから中野を見る。
僕も中野も飯島さんもきょとんとしていると。
「…………え?うそうそうそでしょ?
さよのCクラスの友達って中野くんと三宅くんなの?
なんで言ってくんないの!!」
急に叫ぶその女子に4人とも思わずびくりと体を震わせる。
ショートカットの女子の後ろの2人も同じような愕然とした顔をしていて。
宮田さんが慌ててドアのほうへ駆け寄ると、その女子は宮田さんの腕を掴んで廊下へ引っ張り出した。
「…………………は?」
いつの間にか僕たち以外全員が帰ってしまった教室で、嵐が去ったように静かになった中、まだドアのほうを見つめて呆然としていた僕らの静寂をそんな中野の一言がやぶった。
すると廊下から何やらきゃーきゃーと叫ぶ女子の声が響いてきて。
さらにすぐにまたドアが開いて、宮田さんと愉快な仲間たちが教室に入ってくる。
それを僕たちが相変わらず黙って見ていると、宮田さんが少し困ったような顔で微笑んで口を開く。
「あ、あのね、この3人は私の友達で、Aクラスの……」
そこまで言ったところでショートカットの女子が口を開く。
「吉川ちさです。」
さらにそのうしろの赤い眼鏡をかけた髪の長い女子も乗り出す。
「天野南海です。」
3人目は背の低い髪を2つにしばった女子で、
「武井茜です。」
と微笑む。
突然の自己紹介に少しうろたえながら、名前を覚えるのが苦手な脳を動かす。
「えっと……吉川さんに、天野さんに、武井さん……?」
僕よりもひどい脳を持った中野なんか、顔をしかめているところからしてまったく覚えきれていないらしい。
「名前で呼んでくれればいいのに。
この前の球技大会のときの三宅くんと中野くんの試合見てたよ!」
勢いよくそう言う吉川さんに驚きながらも、僕はなんとか微笑む。
「あ、ありがと。えっと、ちさちゃん……?」
「うん!」
するとその後ろのみなみちゃんがちさちゃんの肘をひっぱる。
「ね、ちさ。今日は早く帰んないといけないんじゃん?」
「あ!そうだ!!
さよ、先帰ってるよ!」
「え?あ、うん。どうぞどうぞ。」
「じゃ、またね!中野くん!三宅くん!」
「へ?あ、またね。」
「じゃあなー。」