僕らのシナリオ
「へ〜、けっこう広いね。」
僕の部屋に入った途端感心する宮田さんをよそに、中野は慣れたようにかばんを放ると、どかっと僕のベッドに座る。
飯島さんは少し緊張したようにドアから顔を出し、また、失礼します、と言って部屋に入った。
僕は壁に立てかけてある折りたたみテーブルを出して部屋の真ん中に置くと、宮田さんと飯島さんのぶんのクッションやら座布団やらを適当な場所に置いて、
「ま、好きなとこに座って。
母さんがそのうちお菓子とか持ってくるから。」
と言って自分もテーブルの近くに座る。
「あ、ありがと。」
飯島さんはおとなしく座布団に座って、なんだかそわそわしていて。
「飯島さんさ、もしかして今すごい楽しい?」
なんとなくそう思って聞くと、飯島さんは驚いた顔をしてから、少し照れたような微笑みを浮かべて。
「……うん。
友達の家で勉強するのも初めてだし、泪くんのお母さんも良い人だし、桜ちゃんもかわいいから。」
本当に幸せそうに小さく笑う飯島さんに、なんだかこっちまで幸せな気持ちになってきて、言葉を失う。
そのうしろで。
「ああ〜、やっぱ落ち着くな〜。」
いつの間にか僕のベッドで横になってしまった中野を見つけ、僕は近くの棚に置いてあったボールを中野に投げる。
「お前ふざけんなよ。
お前のために今日集まったんだから、死ぬ気で勉強して。」
ゴムのボールは軽く中野に当たり、中野がゆっくりと起き上がって頭をかく。
「わかったわかった。
じゃ、三宅先生お願いします。」
膝に手をついて頭を下げる中野にうなずき、まだ立って壁のポスターやらを見ていた宮田さんにも座るように言う。
宮田さんはクッションを抱きながらリュックから教科書やらを取り出し、テーブルに置く。
「じゃ、明日は数学と歴史と英語だから、みんなでがんばりましょ〜。
ちなみに私は歴史が得意だから!」
僕はそれにうなずき、
「僕は数学ね。」
と言う。
飯島さんは眼鏡を上げながら、
「私は英語教えようかな。」
と言うので僕はまたうなずく。
「よし。じゃあみんなで俺をどうにかしてくれ。」
一人偉そうに言う中野に、僕らはため息をついた。