僕らのシナリオ




よっぽど今日のテストがうれしかったのか、はじめから真面目に勉強している中野が、ノートから顔を上げることなく僕のベットの上から聞く。


「なあ、今日飯島は?」

「あ、なっちゃんも誘おうよ。」


宮田さんもノートを置いたテーブルから顔を上げるが、僕は今日の飯島との会話を思い出して言う。



「飯島は今日は塾の日だから、電話してもいないと思う。」



それになぜか宮田さんの目が少し泳ぐ。

僕がそれを不思議に思っていると、宮田さんはいつもの笑顔になって僕の隣に座り直して僕を小突く。


「ちょっとちょっと〜。
飯島、だなんて、いつの間にそんな仲になったの〜?」

「えぇ?そんな仲ってどんな仲だよ。」


僕が焦ってそう言うと、中野がやっと顔をあげてわざとらしい仕種で腕を組む。


「泪ちゃんをそんな子に育てた覚えはありません!」

「きも。」



僕が無視してまたノートを見つめるが、宮田さんがテーブルに肘をついて僕の顔を覗き込む。


「ね、ね。
結局はなっちゃんのことどう思ってるの?」

僕が目を向けると、宮田さんは猫みたいな大きな目に、妙に真剣な色を浮かべてこっちを見ていて。


なんだか気まずくなって、すぐにノートに目を戻す。


「…………さあね。」

ノートを見つめる視界の端に写っていた、テーブルに垂れる宮田さんの長い髪が揺れる。



「さあねってことはないでしょ〜。」

「そうだそうだ。はっきりしろ。」


宮田さんと中野の声に一度ため息をつくと、僕は顔を上げて天井を見つめる。



飯島のことを、どう思っているか。





正直、最近は少しそのことを考えるようにしていた。

僕は飯島とは仲が良いとも思っているし、とくに球技大会以降はたくさん話すようになった。


物静かでたくさんの人とつるむわけではない飯島にとって、僕はクラスの中でも特によく話すほうなのかもしれない。



飯島といるとすごく平和、というか穏やかな気持ちになる。

居心地がいい、って感じだ。



自分から話しかけたりすることも多いし、クラスの飯島がよく目にとまる。




でも………







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