僕らのシナリオ
「…………ほんとにわかんない。
好きっていうのがどんな感覚かわかんないんだから、わかるはずないでしょ。」
僕はそれだけ言ってノートに目を戻すと、またもくもくと勉強をはじめる。
「……………ふーん。」
中野はなぜかそれに満足したようで、何度もうなずくとまた静かに勉強をはじめた。
宮田さんはしばらく黙ってから僕から離れて勉強を再開する。
僕はしばらくは、教科書の同じページをずっと見つめていた。
「三宅、見ろよ見ろよ!!!
俺すっっげぇ出世!!!」
「うぉ、ほんとだ!やったな!」
テスト期間が終わった休日明け。
学校の玄関に成績表が張り出された。
いつもクラスの最下位近くにいた中野が、今回は40人いるクラスの中でも真ん中のあたりに名前が書かれていた。
僕は………
「うそだろ…………」
僕ははじめて、クラスのトップ3に入った。
「さ、3位?お前すげぇな!」
「まじかよ……すごいうれしい。」
「俺と勉強したおか……」
「それはちがうから。」
登校してきた生徒たちがみんな成績表を見に来るので、とんでもない人混みに押されながら僕と中野はわいわいとさわいでいた。
すると背後の人混みがぐいぐいと動く。
僕がそれに振り向くと、
「みーやっけくん!!」
人混みを掻き分けて現れた宮田さんが僕のかばんに飛びつく。
「おはよ。」
「お、宮田おは!」
僕と中野がそうあいさつをすると、宮田さんはかなりこの人混みに苦労したようで、少し息を整えてから僕を見上げる。
「おはよー。ふあ〜。相変わらずすごい人混みですな。」
「だね。宮田さんのAクラスあっちだよ。」
「見てきた見てきた!」
「ほんと?どうだった?」
にっこり笑ってピースを作ると、宮田さんは胸をはって言う。
「クラス1位でした〜。」
「うそぉ?!やば!!!」
僕が驚いて口を開くのよりも先に中野がそう叫ぶ。
宮田さんは中野に向かってまたにこにこと微笑むと、僕の肩口から少し背伸びして顔を出すと、僕らのクラスの成績表を見つめる。
「おぉ?ゆうちゃんが後ろにいないぞ?
どこだどこだどこだ…………ってえぇぇえぇ?!!」
宮田さんが今までに見たことがないほど驚くので、中野はわざとらしいほど胸をそらしてドヤ顔で一言。
「どや!!」
「そのまんまかよ。」
僕があきれていると、宮田さんはさらに成績表を見つめて、僕の名前を探す。
「あら、三宅くん発見!
3位だって!やったね!」
差し出された宮田さんの手にハイタッチをする。