僕らのシナリオ
「宮田さんのおかげで歴史もうまくいったから。ありがと。」
僕がそう微笑むと、宮田さんは少し顔を赤くしてとてもうれしそうに笑う。
その顔が、かわいいな、なんて思って少し固まる。
すると、
「ぅわっ!」
人混みに押された宮田さんがバランスを崩して僕のほうに倒れ込むので、思わず受け止める。
「いたたた………」
そう言って肩をさすりながら宮田さんは顔を上げ、僕と目を合わせて固まる。
僕も予想以上に近い宮田さんの顔に驚きながら、なんとか表情を保って宮田さんを僕の前に引っ張る。
「大丈夫?
こっちのほうがいいかも。」
そうすると宮田さんはやっと気がついたようにして、
「あ、ごめん、ありがとう。」
と言って大人しく僕の前に出る。
なんとなくそわそわしながら、成績表を見ていると、やはりクラストップに飯島の名前が書いてあるのが目につく。
「あ。」
僕は思わず大きいとは言えない身長を伸ばしてまわりを見回した。
「え?どうしたの?」
宮田さんがそう聞いてくるが、僕は答えずに視線を走らせ続けた。
結局見つからず、人混みを掻き分けて後ろへ戻る。
「あ?三宅……」
「三宅くん!」
宮田さんと中野の声が後ろから聞こえるが、それにも答えなかった。
なんとか人混みを抜けて視界が開けると………
「あ……」
そこにやっと飯島を見つけた。
かばんを両手で持って、一生懸命背伸びをして人混みの向こうの遠くの成績表を見つめていた。
飯島はすぐに僕に気づいて少し驚いた顔をしてから、いつもの静かな微笑みを浮かべる。
「あ、泪くん…。おはよ。」
いつもの顔に僕は少し安心してため息をつく。
「はあ………よかった。」
「え?」
小首を傾げる飯島に、焦っていた自分が馬鹿馬鹿しくなって少し笑う。
「あはは、いや、飯島の身体じゃさ、この人混みの中歩くのは危ないだろ?
だから探してたんだけど、まずこんな人混みに入るわけないよね……あ〜よかった。」
そう言って笑い出す僕をしばらく不思議そうに眺めてから、飯島も小さく笑う。
「………そっか。心配してくれて、ありがとう。なんだか……うれしい。」
心配、という言葉に少し焦っていると。
「いたー!!三宅くん!!」
声をかけられて僕は振り向いて、飯島も僕の背後をのぞく。