僕らのシナリオ





河原は相変わらずきれいだった。



夏になって日も長くなった今は放課後とはいえまだまだ明るい。

夕日のオレンジの光の予兆なんかもまだなく、強い日差しに照らされて光る川の水面が涼しげに揺れていた。



河原に着くなり自転車から飛び降りて走っていく宮田さんに笑ってから、僕は自転車のストッパーを立ててカゴからかばんを取り出して宮田さんを追う。


宮田さんはすばやく靴と靴下を脱いで川にざぶざぶと入っていっていた。



「つめたーい!ぬるかったらどうしようかと思った!」

「あはは!そんなあばれてると転ぶよ。」


僕も靴と靴下を脱いでズボンを膝までまくり上げると、川に足を入れる。


「うわっ、ほんと冷たい!」


僕が感心して川の中をのぞいていると、宮田さんは下ろしていた長い髪をポニーテールにしながら言う。



「テスト期間のあいだずーっと河原に三宅くんと来たかったんだ〜。」

「そんなに川来たかったんだ。」

「うん!写真も撮りたかったし、なんだかんだ言って三宅くんと2人で遊ぶのって初めてでしょ?」

「え?そうだっけ。」

「そうだよ〜。いっつもゆうちゃんがいたからね。」

「ああ〜たしかに。」


僕が笑いながら納得すると、宮田さんはポニーテールを確かめるように一度降ってから、膝に手を当てて川をのぞいていた僕の顔を覗き込む。



「たまには2人もいいでしょ?」


いたずらっぽく微笑む宮田さんに答えられないでいると、宮田さんが自分のポケットと僕のポケットに手を突っ込んで中身を出すと、河原へ放り投げる。



「何してんの?」

「濡れちゃうでしょ?」

「は?」



その瞬間、宮田さんは僕の体を思いっきり押す。


「うっわ!!」


自分の足が片方浮き上がるのをしっかりと視界にとらえて、僕は川の中に倒れ込んだ。


「ぷはあっ!」


浅瀬とはいえ尻餅をつくと胸まではある川から顔を出すと、宮田さんが大笑いしているのが見える。


「あははははは!!見事な転び方!!あはは!!」


あまりにも楽しそうに笑う宮田さんにつられそうになりながら、僕はなんとかこらえて怒った顔を作ると、

「このやろ……」

水からゆっくりと立ち上がる。



宮田さんは笑うのをやめて突然カッターシャツを脱ぐ。

僕がそれに思わずぽかーんとしていると、カッターシャツから宮田さんの体操服が現れる。

宮田さんはさらにスカートを脱いで下の短パンもあらわにすると、カッターとスカートを河原へ放り投げる。


そして僕に向かってわざとらしいファイティングポーズをとると、

「よし、来い!」

なんて言ってきて。



僕はあまりの計画性に笑ってから、本気で宮田さんを追いかけた。






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