僕らのシナリオ
「ねぇ、この『素材』って、なに?」
「ああ、それは………」
宮田さんが指差していたアイコンを開く。
すると画面いっぱいにたくさんの写真が現れて。
夕焼けや、青空。
ほとんどが、何かしらの景色の写真だ。
「わあ…………」
「けっこうきれいでしょ?
話を作ったり、表現したりするときにさ、こういう景色を写真に残しとくとイメージがわきやすいからね。」
「これ全部三宅くんが撮ったの?」
「ん?うん。」
「へぇー……」
宮田さんはしばらくマウスを使って写真をいくつか見ながら、黙り込んでしまう。
しばらく僕も待っているが、間に耐え切れずについに口を開いた。
「…………宮田さん?」
「ふわっ!あ!ごめんね。
つい夢中になっちゃって…」
びくりと肩を震わせて照れたように微笑む宮田さんに、思わず笑う。
「はは、いいよ。写真好きなの?」
「そうなの。写真部にも入ってるし。」
「えぇ?!そうなんだ!」
「うん!きれいな景色って、どうしてもとっておきたくて。」
「わかるわかる!もう見れないと思うともったいないよね。」
「そうなのー!」
あまりにも盛り上がりすぎて、そこで2人顔を見合わせて笑う。
さらにそこで。
『下校時刻となりました。
延長届けを出していない部活のみなさんは………』
下校を告げるアナウンスが鳴り、顔を上げる。
「もうそんな時間なんだ。」
僕がそうつぶやくと、宮田さんが突然慌てて立ち上がる。
「わ!えっと、ごめんね。
なんか、邪魔しちゃって……」
「え?ああ、気にしないで。」
そう言いながらパソコンの電源を切り、ノートを鞄にしまってカギを手にとると、僕も立ち上がる。
「それに、楽しかったしさ。
もう遅いから、送って行くよ。」
僕がそう言うと、リュックを背負っていた宮田さんが驚いたように目を開く。
「いいの?」
「うん。カギ返しに行くから、職員室までついて来てくれる?」
「うん、ありがとね。」
「どういたしまして〜。」
また写真について話しながら、僕らは教室を出た。