僕らのシナリオ
いよいよ大会が近づいて、中野はより忙しくなったみたいだ。
本格的になった練習に、僕は遠慮してバスケ部の練習の見学に行くのをひかえるようにしていた。
さらにひまになった夏休みにうんざりしながら、映画研究部の会議に行った帰り。
結局キャスティングの発表もたいしたことなくて、僕は本番近くのセットも使った練習が始まるまでは暇になった。
ほんとにやることがなくなってきたな、と思う。
このまま帰っても、さくらの買い物に付き合わされたりするだけなので、今日は夏休みの宿題を持ってきていた。
図書館に行って宿題をやろうと思ったからだ。
図書館近くの駐輪場に自転車を停めていると、図書館の近くにテニスコートがあったのを思い出す。
宮田さん、練習してんのかな、と思って図書館の裏を少しのぞくと、やっぱりテニス部の部員らしい人たちがコートにいた。
しばらくきょろきょろしていると、
「のぞき?」
後ろから声をかけられて慌てて振り向くと、いつの間にか僕の後ろで同じようにテニスコートを覗き込むように宮田さんが腰をかがめていた。
僕は強張った身体から息を吐き出して、言う。
「びっくりした〜。宮田さん探してたの。」
「私?」
宮田さんに会うのは、なんだかんだ言って夏休みに入ってからは初めてだ。
白い肌が少し日焼けしていて、ユニフォームが前よりも似合って見える。
僕は微笑んで、
「いや、夏休み入ってから会ってなかったからさ。元気かな〜と思って。」
と言うと、宮田さんはうれしそうに笑って力こぶを作るポーズをとる。
「このとぉーり!元気だよ!
三宅くん久しぶりだもんね。
ゆうちゃんとは部活帰りとかに時々会ってたんだけど。」
「中野も今は大変そうだね。でもこの前2人で海に行ってきた。」
「えぇー!!聞いてない!
行きたかった〜。」
「あはは、部活だっただろうし、遠慮して誘わなかったんだよ。また今度みんなで行こ。」
「うん。」
そこでテニスコートからだれかが宮田さんを呼ぶ。
宮田さんは手を振って合図すると、後ろ手に持っていたテニスのラケットをくるくる回して、
「じゃ、もう行かなきゃ。夏休みの間にまたいっぱい遊ぼ!」
と言うと、手を振って去って行った。
僕は宮田さんを見送り、かばんを抱えなおして図書館へと入った。