僕らのシナリオ
図書館は夏休みだというのに、何人もの生徒が利用していた。
でも聞こえるのは冷房の機械音だけ。
カーペットになった床は、足音さえも吸収していて、温かみのある静けさが僕を包む。
窓際に備え付けられた一人分ずつ仕切りのあるテーブルに、ぽつりぽつりと生徒が座り、ライトを点して勉強していた。
僕は3階に上がり、そこのテーブルのひとつに座った。
僕も時々図書館には来るが、3階が一番のお気に入りだ。
3階は小説ばかりが備えられた階になっていて、時々ここに来ては僕はたくさんの小説を読む。
小説の中でも古い小説ばかりが集まるこの階に来る生徒は少なくて、一段と静かなのもまたいい。
ひとつため息をついてから、僕はかばんから宿題を取り出して手を付けた。
いつの間にか持ってきていた分の宿題が終わって、ペンを置く。
時計を見ると、4時20分。
映画研究部の集まりが終わったのが、1時。
思ったよりも長くやっていたようで、固まった背中を伸ばし、指のペンが触れていた部分をさする。
まだ帰るのも早いかな、と思い、かばんに荷物をしまってからかばんをその場に残し、本棚を散策。
何冊かの本に手を伸ばしてパラパラとページをめくっては、しまい、手を伸ばしてはしまい。
結局2冊の本を手にかかえて1階へと降り、僕は本を借りて図書館を出た。
僕は今日、もうひとつ行くところがあった。
暑い中自転車をこぎある家の前で自転車を停め、インターホンを鳴らす。
家の中でインターホンの音が鳴るのが聞こえ、小さな足音のあと、少し高めの声が僕の目の前の機械から発せられる。
『はい。どちらさ………』
カメラ付きのインターホンから聞こえた声が、すぐに止まる。
僕はそれに少し笑って、
「よ。ちょっといいかな。」
僕にはあっちの顔は見えないけど、僕はしっかり微笑んでカメラに向かってそう言った。
また小さな足音が聞こえて、ドアのカギが開く。
ゆっくりとドアが開かれて、彼女がその隙間から顔を出した。
「泪くん?」
少し焦って出てきたのか、眼鏡を直しながら飯島が出てきた。
飯島はいつもの制服ではなくて、涼しそうな白いワンピースと薄いピンクのカーディガンを着ている。
似合うな、と思いながら、慌てて顔をそむけて僕はかばんをあさった。