*桜色の想い出*
─ドンッ─
その時、あたしは誰かとぶつかった。
「きゃぁ・・・!?」
「あ、ゴメ・・・大丈夫?」
目を開けると前には掌が差し出されていた。
「スミマセン・・・」
あたしはあえて手をとらずに
自分で立ち上がった。
「いや、こっちこ・・・そ・・・」
「え、日吉・・・!?」
突然、自分の苗字を呼ばれたので、
ぶつかった人の顔を見た。
人生って本当に判らない。
幸せな人、不幸な人。
何があるかは、誰にも判らない。
そう・・・突然、初恋の人が目の前に
現れたり───・・・。
「せ、先輩──・・・!?」
驚きのあまり、あたしは声を漏らさずには
いられなかった。
「久しぶり・・・かな?」
先輩はちょっと苦笑いでこっちを見た。
「あ、そ・・・ですね」
「あはは・・・っ」
あたしは上手く笑えず、顔が引き攣ってしまう。
先輩の手にはライラックの花束が持たされている。
「綺麗な花ですね・・・」
あたしはその花束を覗き込む。
「あぁ、今日は俺の妹の命日なんだ・・・」
「それで花束を・・・ね」
「───・・・え?」