*桜色の想い出*
─翌日─

あたしはぼんやりと空を眺めていた。
何かをする気力もなんだか無かった。

ただ時間を持て余すだけだった。


「・・・はぁ」

出るのは溜息だけ。
そして蘇るのは昨日の想い出。


「名前・・・聞いてなかった・・・」


あたしがそうぼそっと呟いた時、
病室のドアががらっと開く。


「────え・・・!?」

ドアの方を見ると、
そこには昨日の彼が立っていた。


「よ、また来てやったぞー!」

「また来たんだ・・・」
「頼んでも無いのに・・・」


何だか少し呆れた。
でも、静かだった空気がちょっと
賑やかになった気がした。

彼のお陰・・・?

まぁ、いいや・・・。


「ねぇ、何で来たの?」

「ひっでー」
「せっかく来てやったのにぃー!」

「でも頼んでないんだけど・・・」

「んーだってお前、昨日ちょっと淋しそうだったから」
「まー俺には関係無いっちゃぁー無いんだけど」


あたしを心配したの・・・?
昨日会ったばかりのあたしを・・・?



「馬鹿なの・・・?」


「え、ひでぇぇー!」

どうやらいつの間にか心の声は
本当に声となって出ていたらしい。

まぁ、本音だしいいよね・・・?
馬鹿は馬鹿なんだし・・・。


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