あの夏の君へ
「亜樹」
そう言って、彼は両手を大きく開けた。
「何?」
「こっち来てや」
「わがままばっかりやな」
ゆっくりと彼の腕の中へ。
雨の音だけが心地よく私たちを包み込んだ。
感じる両想いという言葉。
聞こえてくるのは、彼の鼓動の速さだけ。
「やばい…今日一日まともに亜樹の顔見れへんわ…」
「私も今それ思ってた〜」
二人して笑った。
「六月七日…?」
「ん?今日の日付?」
「記念日の話!!」
「あ〜」
幸せを形に変えて。
私たちは歩き出した。
周りなんて見ていなかった。
自分達だけが大事だった。
自分だけが大事だった。
あの頃の私たちはまだ幼く、考え方も浅はかだった。