あの夏の君へ
付き合ってからも、私たちはいつも通りだった。
たまに放課後残って、荻の部活が終わるのを待ったりするくらい。
普段通り、何も変わらなかった。
変わったんはそれぞれの気持ちだけ。
表に出さないんが荻流の照れ隠し。
だから喧嘩もなく、特に引っ掛かる訳でもなく、やってこれた気がすんねん。
「荻〜」
「まっとって!!」
緑のフェンス越しに彼に話しかける。
練習中は話しかけない約束。
まあ、大概破るけど。
迷惑って分かってても、したくなる。
「はい、集合〜」
監督の声で部員たちが集まりだした。
集合は帰れる合図。